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クラブマーケティング成功物語Ⅳ



先週末(夏休みに入った最初の3連休のときのこと)、
高速道路を使って旅行に行きましたが、
ものの見事に渋滞にはまりました。
行きも帰りもかなり時間をずらして行ったのですが、ダメでした。
久しぶりの渋滞らしい渋滞でした。
もともと、出かける機会は多いのですが、渋滞嫌いなので
できるだけはずすようにしているのですが・・。
高速道路1000円の影響があるんだと思います。
自分の感覚的なものですが、渋滞中に通り過ぎる
クルマを見てみると、20台に1台くらいの割合で
レンタカーでしたね。


さて、今日の本題。
クラブマーケティングがわかりにくいとの声に
お応えして、成功物語を4部、小冊子形式で
作成していたのですが、最終話である4部目が
ようやく校了しました。来週納品です。
当社HPから申し込めますので、ご希望の方はどうぞ。
4部まとめてお送りすることも可能です。


さわりをここで紹介します。
今回は、クラブマーケティングの本格対応、
「クラブ(会員組織)化」です。


プロローグ

小春日和の昼下がり。昼食を終えた本多のもとに1本の緊急連絡が入った。中堅自動車会社D社の佐藤だった。
「本多さん、例の件で至急相談があるんです。申し訳ないけれど、すぐにウチのオフィスまで来てくれますか?」
「えっ、あの……、佐藤さん、例の件って……」
「以前、話しませんでしたっけ……新型エンパイアの件ですよ」
「あっ、すいません。思い出しました。すぐにお伺いします」
大手広告代理店の営業マンである本多の記憶から“例の件”が抹消されていたのも無理はなかった。本題のついでで出てきた話だったからだ。D社の高級セダンシリーズである「エンパイア」が10年ぶりにフルモデルチェンジして発売されるという話である。そのプロモーションを本多に依頼すると思うので、その際は…ということは前に佐藤から聞かされていたのだが、その時は対応していた案件で手一杯だったのと発売が3年後ということもあってまだ少し先と考えていたので、とっさに反応できなかったのだ。
 本多は取るものもとりあえず、いつもの革カバンを持ち出すと、大急ぎでD社に向かった。
「本多さん、悪いね」
佐藤は会議室の机に資料を置きながら、イスに深く座った。資料には多くの書き込みがなされている。恐らく午前中に社内で打合せがあったのだろう。その内容を矢継ぎ早に書いた雰囲気が見て取れた。佐藤はD社に入社10年目。D社の広告・プロモーションを担当している本多とは同い年でウマが合ったこともあり、何かと本多に相談をしてくれる。
「今朝、急に上司に呼ばれて、3年後に発売される新型エンパイアのプロジェクトチームのメンバーに任命されたんですよ。上司も役員から急に指示されて混乱しているみたいで、あんまり明確な指示はもらえなかったようなんですけれど、10年ぶりのフルモデルチェンジだということで話題性もあるし、何より当社のフラッグシップモデルなので、既存の顧客の買い替えはもちろん新規顧客もとりたい、たぶん経営者や富裕層を対象とした見込み客獲得のためのプロモーションをしたいということらしいんですが……」
「なるほど。富裕層向けのプロモーションですね。当社も富裕層向けのプロモーションもいろいろやっているので、それだったら大丈夫だと思いますよ」
「それはよかった。でもね、時間があまりないんですよ。1週間ぐらいで提案できますか?」
「頑張ってやってみますが……」
そのとき本多の頭にX社の真田の顔が浮かんだ。富裕層にも詳しい彼に相談すれば、なんとかなりそうだ……。
「ひとつ条件があります」
と本多は言った。
「うちが、この手の話があった時に協力してもらっている富裕層のマーケティングが得意な会社と一緒にこの件を進めさせていただいていいですかね」
「それは構いませんよ。しかし、場合によっては、本多さんと共にプロジェクトチームの打ち合わせに出席してもらうこともあるかもしれませんが、いいでしょうか?」
と佐藤が言った。
「たぶん、大丈夫だと思いますが、その件については後ほどもう一度連絡させていただきますね」
本多は、佐藤から資料を受け取り、急いで自分の会社に帰った。この案件が成功すれば、広告以外でもD社の仕事を継続的にもらえそうだ。さっそく、自社に帰ってX社の真田に連絡したところ、快諾してもらった。連日徹夜の作業になってしまったが、ようやくエンパイアのプロモーション施策をまとめた提案書が完成した。これでD社へのプレゼンも絶対にうまくいくと本多は確信していた。

第1章
第2章
第3章
第4章
エピローグ
最初の提案から約1年が経ち、ようやくエンパイア・オーナーズクラブが立ち上がることになった。
当初はオーナーズクラブ発足に先立って既存のエンパイアオーナー全員に招待DMを発送し、発足前に会員証を送る予定であったが、会員組織とサービスの内容の確定が遅れたため、システム開発も全体的に遅れ気味になってしまっていた。そのため発足の段階では手作業で処理してエンパイアのオーナーの中でも上位の数百名だけに招待DMを発送するのが精一杯だったのだが、対象が絞られたことがかえって功を奏したのか、そのほぼ全員にエンパイア・オーナーズクラブに入会してもらえることになった。まずまず幸先のよい結果といえるだろう。
 しかし、その一方で運営面ではいくらかの支障を来すことになった。特に専用デスクは慣れていないせいか不手際やオーナーに手間をかけてしまった部分も散見され、おもてなし感に欠けたものになってしまうこともあった。しかし、もともとエンパイアという車が好きなオーナーが集まっているだけあって、むしろこうしたオーナーズクラブが作られたことに喜びを感じている人が多かったようだ。専用デスクでの少々の不手際は大目に見てもらえることも多かった。
会員の反応は概ね良好で、専用Webサイトの閲覧数が徐々に増え、メールマガジンの記事の内容についての問い合わせなども専用デスクに入ってきているという。
 
オーナーズクラブが発足してから2年が経過すると、専用デスクへの問い合わせやオリジナル特典の活用、コンシェルジュサービスなどのサービス利用が増えて、クラブの仕組み自体がうまく回るようになってきた。
D社の社内での反対の意見もあった専用デスクの導入についても意図した以上の効果が表れ始めていた。専用デスクでのやりとりを通じて、オーナーの属性や車以外の事柄に関する嗜好といった、より詳細なマーケティング情報を蓄積していくことができてきたのである。今後は、そうしたデータを活用しながら顧客との関係維持のためのサービスを改善していくことになる。
 また、会員資格の適用範囲にオーナーの家族を含めることについてもD社の社内で異論のあったところだが、D社にとってはこれによってオーナーの家族構成を把握し、またその家族に対してもD社がどのような商品を提供して、どのような活動をしているのかといったことを深く知ってもらう機会を継続的にもつことができた。そうしたことは、さすがに高級車であるエンパイアを家族が購入することにはつながらなかったとしても、D社のファミリーカーやSUVといった他の車種を販売するきっかけになったのだ。

では、肝心のエンパイアの売上はどうなったのだろう? ここは新モデルのエンパイア発売から1カ月後のD社の会議室である。
「エンパイアの販売ですが、なんとその時期に車検を迎えた既存オーナーの70%が新しいエンパイアに買い替えてくれました!」
佐藤が満面の笑みで、本多に向かって発表した。クラブマーケティングが功を奏したのである。
「佐藤さん、やりましたね」
本多もとても喜んでいるようだった。
「どうやら、オーナーが知人に購入を勧めて、その知人が購入したケースも少ないながらあるようです。クラブマーケティングというのはそういう効果もあるんですねえ。ここに真田さんがいれば、そのことについていろいろ聞けたのに……」
佐藤は残念そうに語った。苦労したクラブマーケティングの成果の発表を皆で行うはずだったのだが、真田は今日も別のクライアントにクラブマーケティングの提案を行なっている。
「真田さんも残念がっていましたよ。この会議に出る予定だったんですが……」
本多も真田がいないことで何やら寂しさを感じているようだ。
「でも仕方がないですよ。きっと真田さんも喜んでいることでしょう。実は、エンパイアで成功したので、私たちはこのクラブマーケティングを他の車種にも導入できないかと考えているんです。改めてまた、私と本多さん、真田さんの3人で打ち合わせをしましょう」
「ええ、いいですね。楽しみです!」
本多はそうやって佐藤に答えた。
 数週間後、D社ではクラブマーケティングによる販促手法を他の車種に適用することを決めたのだった。

<成功のポイント>
オーナークラブによる顧客の囲い込み、クルマ以外の接点を作り出す限定サービス、ポイント・プログラム、コンシェルジュデスクといったサービスにより関係性が維持・深化できたこと。また、それらサービスにより、クルマやオーナー属性以外の情報が取得でき、さらなるサービスの開発・提供を続けていること。