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クラブマーケティング成功物語Ⅲ


先週、アップできなかったので、今週はもう1本アップします。


さて、今日は、以前にもお知らせした
クラブマーケティング成功物語の第3話ができたので
さわりをここで紹介します。
今回は、クラブマーケティングの正攻法、「クラブ内クラブ」です。


プロローグ

「中村君、これが新しい君の仕事だ……」
会議室に呼ばれた自分の前に座っていた、マーケティング部の部長の三島は、1枚の紙を渡した。その紙には、ある数字が書かれていた。その数字は月を経るごとに次第に大きくなり、先月は1.6%と記されている。それが、クレジットカードの退会率の数字であることに時間はかからなかった。
「はぁ……これが何か?」
「気のない返事をしてくれるな。クレジットカードの退会率(※1)を減らす仕事が君の当面の仕事だ。もちろんリテンション全体が君の役割だが、今の最優先課題は、年会費1万円のゴールドカードの退会率が上昇している。すぐに調査して、改善策を計画したまえ」
 中村のいるC銀行は、つい先日、個人顧客向けに経営の舵を大きく切った。今までの成長拡大路線で巨大な損失を出してしまい、今後は、顧客本位に今までのサービスを順次見直していこうということになったのである。C銀行はその姿勢を内外に示すために、新たにマーケティング部を設置した。中村は4月からマーケティング部に異動してきたばかりであった。
中村は支店配属時代に、マーケティング手法を取り入れた、顧客サービスを提案したことで上司の覚えがよかったのである。マーケティング部が本社に設立されるととともにすぐに配属されることになった。
「それにしても……これは、ひどい退会率だな」「月間1.6%とは、年率では19.2%にもなる。新規顧客獲得がこの率を上回っていたとしても、許容できる範囲の数字ではない。」
 部長に言われるまでもなく、退会率が高まっている理由は中村に容易に想像できた。自分も支店配属時代、お客さんに自分の銀行のゴールドカードを作ってくれと半ば強引にお願いをしていた。そのツケが表面化してきたということなのだろう。いろいろ頭の中で考えて沈黙したままでいると、三島は中村の肩を叩きながらこういった。
「斬新な考え方を持つ君だからこそ、この難局を打開できると思って抜擢したんだ。ぜひ期待に応えて欲しい。よろしく頼む!」
 これは面倒な仕事を押し付けられたな、と中村は直感した。退会者を減らせという仕事は、どう考えたって出世街道を歩むものの仕事ではない。とはいえ、不思議とその仕事を断る気にもなれなかった。強引に入会してくれたお客さんの罪滅ぼし……というわけではないが、これを機会に入会してよかったと思えるサービスをお客さんに提供したかったからだ。やりがいのある仕事だと思えたのだ。
「……わかりました。微力を尽くしてみます」そう答えて、中村は会議室を後にした。


第1章 各種リテンション施策の試行
第2章 クラブマーケティングの正攻法「クラブ内クラブ」
第3章 クラブ内クラブのフレーム
第4章 各サービスの本格準備
第5章 専用デスク立ち上げ


エピローグ
 この日、クラブ内クラブが始動した。4カ月このプロジェクトに寝食を忘れて関わってきた中村には胸に込み上げる熱いものがあった。カードの利用明細書にパンフレットを同梱したり、カードの専用サイトでメルマガ登録をしてもらうことで、クラブ内クラブのアピールを行った。デプスインタビューの結果通りに、顧客の反応は上々だった。急ピッチで立ち上げた専用デスクでは、当初、外注先との連携がうまく取れず戸惑っていたが、業務フローが定着化することで、問題は解消されていった。おかげで、開始3カ月後には、メンバーが500名を超えることになった。クラブ内クラブを立ち上げてから初めての大型の連休が過ぎて、さまざまな感想が専用デスクにもたらされた。その多くは喜びの声であった。無論、お叱りの声もいただいたが、その多くはサービスをもっと増やして欲しいという叱咤激励の声であった。退会率も少しずつ減っているという。
 スタートして半年後、無料の試用期間が過ぎ、最初の会費請求を実行した。もちろん多少の混乱はあったが、専用デスクから説明があるとほとんどの会員の方が納得してくれたという。今やクラブ内クラブは完全に軌道に乗り始めた。
 中村は、今度は食のクラブ内クラブを発足させようと、早速、真田との打合せアポを入れた。


中村さんがわかったこと
●退会するマインドが起こってからの施策では、結局大半が辞めてしまう。そうなってからでは、遅いんだと理解した。
●マスキャンペーンやワントゥワンマーケティングがすべてNGだとは思っていないが、少なくとも、当社には合わないことがわかった。
●当社のような顧客組織には、クラブマーケティングの中でもクラブ内クラブという手法が最も適していることがわかった。退会率減少や優良顧客育成には、多くのクラブ内クラブを早期に立ち上げる必要があることもわかった。


成功のポイント
●クラブ内クラブの具体的な顧客サービス、顧客に刺さるサービスをリサーチで見つけることができたこと。
●顧客に喜んでもらえる、支持されるサービスを作り出し、提供したいとの強い思いが中村にあり、それを実現できたこと。


<他業種への適用例>
今回は、銀行のクレジットカード子会社を例にあげましたが、以下の業種にも適用可能です。
●金融機関全般(銀行・証券・保険など)
●不動産会社(購入者・購入見込者向けに)
●通販会社
●クルマメーカー