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クラブマーケティング成功物語Ⅱ



ついこの間、冒頭はインフルエンザのことを書きましたが、
そんな話題、目にすることが少なくなってきました。
相変わらずの熱し易く・・・ですよね。


さて、今日は、以前にもお知らせした
クラブマーケティング成功物語の第2話ができたので
さわりをここで紹介します。
今回は、サービス・コンテンツ開発です。
クラブマーケティング、イメージがわきにくいとのことで
それを少しでも解消してもらうために、このような
小説風の物語を書いています。
いくつかの成功例をおりまぜたもので、
守秘義務の関係で、あるクライアントさんの例、
ずばりを書いたものではありません。


第1話の小冊子、数百の申込をいただきました。
ありがとうございます。
第3話・第4話も書いているところです。
7月上旬には4話すべて完成させる予定です。


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クラブマーケティング StoryⅡ
~サービス、コンテンツ開発~


プロローグ

「あーあ、弱ったなあ」
 ある日の午後、B社でCRMを担当する小野寺は、昼食後にいつも寄るカフェのテラスでこう呟いた。そよそよとした心地よい風が吹く高台のその場所は、およそ悩みを話すような場所に似つかわしくなかった。
「何をそんなに弱っているんですか? 先輩」
 無粋に、こう声を掛けてきたのは、小野寺の後輩の小川である。小野寺には現在2人の部下がいる。1人は小川。もう1人は派遣で来てくれている女性社員だ。春から小川が来るまでは、小野寺には部下は1人もいなかった。食事に行くのも1人だし、カフェに行くにも当然、1人きりである。ところが、この春からは状況が一変した。小野寺は、この新人と食事に出たり、コーヒーを飲んだりするのがほぼ日課になっていた。
 しかし、悩みを新米の小川に言ったところで何の解決にもならない。そう思いつつも、小野寺は小川に悩みを話さずにはいられない気分になってきてしまった。そして、口元にまで持っていきかけたコーヒーのカップをテーブルの上に戻しながら話を続けた。
「お前も苦労した、この間の一件の続きだよ」
 小野寺のいう、この間の一件とは、通信販売の顧客向けサービス改善の話である。小野寺が所属するB社は、植物原料を主原料にスキンケアやボディケア、バスケアの化粧品、フレグランス、健康食品を扱っている小売業である。
大手百貨店や駅ビルなどを中心として都内に10店舗のリアルショップを持つだけでなく、インターネットを活用した通信販売も行っている。同社の成長のきっかけは健康食品であった。ダイエットにも効果があるとの評判が少しずつ口コミで広がり、それに伴って売上も伸びていった。ところが、一過性のブームであったのかリピートして継続的に購入してくれる顧客は多くなく、売上も次第に頭打ちとなった。
 そんなときに小野寺が考え出したのが、商品の定期購入者を対象とした会員制度だった。
『B社くらぶ』と名付けたこの制度の会員にはB社の商品が毎月届く。届けられる商品は、B社の指定した商品ラインナップの中から会員があらかじめ選択することができるシステムになっている。指定商品はダイエット関連以外の商品だが、通常価格に比べておおむね3割程度安い。もちろん送料も無料だ。しかも会員はダイエット関連の健康食品も2割引きで購入できる。
同社の商品を継続的に購入してくれる顧客を会員組織化し、様々なメリットを提供して固定化することによって、今まで不安定であった健康食品部門の売上は安定することになった。
「『B社くらぶ』は、入会する人が順調に増えて売上もよくなったって聞いていたんですけど……。それで先輩、時間ができたから家族旅行に行くって言ってましたよね。で、この間の一件の続きって、何です? 何か問題があったんですか?」
 小川は何も考えずに、しつこく聞いてくる。
「それが、ここんところ『B社くらぶ』を退会する人が増えてきているんだ。新規入会のペースは変化しないものの、それ以上の勢いで退会者が増えている。定期配送に手書きの手紙を同梱したりして、いろいろ工夫はしているんだが、なかなか会員組織として安定しないんだ」
 小野寺は、手元で冷たくなってしまったコーヒーをすするように飲んだ。その味はとても苦く、ますます気分が滅入ってしまった。
「会員組織を立ち上げるのに結構大変だったから、その成果が出たと部内で皆喜んでいたのに……。あ、あの……それで……何か解決策ってあるんですか?」
小野寺の雰囲気を察し、消え入りそうな声で小川は質問を続けた。
「いや、今のところない。その件だと思うんだけど、このあと菊池サンに呼び出されててさ。だから弱ったなあと思ってさ……」
 パッと伝票を取りながら小野寺は席を立った。これから起こるであろう気の滅入る事態を払拭するような勢いで立ち上がったが、その足取りもとても重そうに見えた。

(2)
 「失礼しますッ!」
 小野寺は勢いよく会議室のドアを開けた。カラ元気でも出さなくてはやっていられないと半ばヤケになってドアを開けたのだが、勢いが余って部屋に飛び込んだ格好になってしまった。小野寺の上司であり、役員の菊池が驚いたような顔をしてこちらを見た。






(3)
(4)
(5)
(6)
(7)エピローグ
「あの、A農家の食材を食べている近隣の住民はな、皆90歳だけど腰を曲げて歩いていないんだ。なぜだと思う……」
小野寺が話しかけようとした瞬間。小川が話を遮った。
「先輩、その話は何度も聞きましたよ。先輩が調べにいった四国の農家の話でしょ」
「なぜ、わかったんだ。お前すごいな!!」
「……」
 ここは風の心地よい冒頭のカフェテラス。プレミアムサービス導入から約1年が経とうとしていた。小野寺の肝煎りで始めた「B社くらぶ」の会員数はこのところは退会数が大幅に減少したことに伴って、会員残高は順調に増え続けている。健康食品部の売上はブームや競合の動向などによって大きな影響を受ける不安定で不確実な状態を脱し、B社クラブの会員による定期購入をベースとしてある程度安定的に見通せるものになってきていた。
 また、メルマガで新サービスを告知した結果、既存顧客の間で、B社くらぶの会員になると、無農薬、有機野菜のお取り寄せができるといったプレミアサービスの話が口コミで広まって注目度が高くなっていた。その後、サービス提供先の農家に話を聞くと、従来からの主な顧客層であるファミリー世帯以外にも若い女性層の取り込みができているというのである。これら本業以外の売上は数千万円規模に上昇してきている
 また、さらなるサービス提供先の追加を頼まれることも多くなった。
「お客様に喜んでもらうコンテンツを導入するまでは、意外と大変だったけれど、一端、仕組みを作ってしまえば、後は管理も楽だし、会員も順調に増えている。また新しいサービスについて、真田さんと相談しよう」
 1年前の悩みの雰囲気がウソのように晴々とした顔で小野寺だった。